オンタリオ州の委任状(POA):2種類の違い、作成の要件、日本で使う際の手続き
オンタリオ州の委任状(POA)
2種類の違い、作成の要件、日本で使う際の手続き
本記事の情報は2026年10月15日時点のものです。
委任状(POA、Power of Attorney)は、委任者が選んだ受任者に、財産や医療、生活に関する決定を委任者に代わって行う権限を与える書類です。オンタリオ州では、財産に関する委任状と、医療や生活に関する委任状を別々に作成し、効力が生じる時期や作成の要件も異なります。
財産管理のための委任状と、医療と生活に関する委任状
財産管理のための委任状(Continuing Power of Attorney for Property)は、銀行取引、請求書の支払い、住宅の管理や売却、投資の管理など、お金に関する権限を受任者に与えるものです。18歳以上であれば作成できます。書類に特に定めがなければ署名した時点から効力が生じます。委任者が認知症や病気、事故などにより自分で判断することが難しくなった時点から効力が生じるように定めることもできます。
医療と生活に関する委任状(Power of Attorney for Personal Care)は、医療のほか、住まいや食事、衣服など日常生活に関する決定の権限を与えるものです。16歳以上であれば作成でき、委任者がその決定を自分で行えないときに使われます。
委任者が自分で判断することが難しくなった場合の委任状の効力
ここでいう自分で判断することが難しい状態とは、認知症や脳卒中、事故による意識の低下などにより、財産の管理に必要な情報を理解できない、または決定の結果を判断できない状態を指します。体が不自由で署名ができないこととは異なります。
特定の取引だけを任せる一般的な委任状は、委任者がこのような状態になると効力を失います。オンタリオ州の財産管理のための委任状は、このような状態になった後も効力が続くように作成するものです。認知症や事故に備えることが目的であれば、その旨を書類に明確に記載しておく必要があります。
委任状を作成するための要件
委任者は、作成の時点で委任状の内容と意味を理解できる状態でなければなりません。署名には2名の証人の立ち会いが必要です。受任者とその配偶者、委任者の配偶者と子ども、財産または身上について後見を受けている人、18歳未満の人は証人になれません。
弁護士に依頼せず、オンタリオ州政府の無料の書式で作成することもできます。オンタリオ州政府は、口座の構成が複雑な場合、事業を営んでいる場合、家族関係が複雑な場合、他の州や国外に財産がある場合には、弁護士に相談するよう勧めています。
委任状がない場合
財産管理のための委任状がないまま、自分で判断することが難しい状態になると、配偶者を含む家族にも、お金に関する決定を代わりに行う権限は自動的には生じません。家族が裁判所に後見人の選任を申し立てる必要が生じることがあり、ほかに方法がない場合は、オンタリオ州公的後見人・受託者事務所(Office of the Public Guardian and Trustee)が決定を行います。医療や生活に関しても、家族が行える決定は一部に限られます。委任状は、委任者が自分で判断できるうちにしか作成できません。
不動産取引に使う場合
委任状は、不動産の売却や抵当権の設定にも使うことができます。オンタリオ州の土地登記システムは、身分証明書の写しやその情報、銀行口座番号、パスポート、出生証明書などの個人情報が記載された委任状を受け付けません。不動産取引に使う可能性がある委任状は、作成の段階からこの基準に合わせておく必要があります。
日本で使う場合
カナダで作成した書類を日本の銀行や法務局、市区町村などに提出する場合、日本国籍をお持ちかどうかによって手続きが異なります。
日本国籍をお持ちで、日本に住民登録がない方は、日本の印鑑証明に代わるものとして、在トロント日本国総領事館で署名証明を受けることができます。署名と拇印は総領事館の担当官の面前で行う必要があり、あらかじめ署名した書類は証明を受けられません。代理人による申請もできません。日本の銀行などから署名すべき書類が送られてきている場合は、署名せずにそのまま持参します。不動産登記などで住所の証明を求められた場合は、同じ総領事館で在留証明を申請できます。日本国籍をお持ちの方でも、総領事館から遠く離れた地域にお住まいの場合など、領事の署名証明を受けることが難しいときは、外国の公証人が作成した署名証明を不動産登記に使うことが法務省により認められています。
カナダに帰化された方や、日本国籍をお持ちでない方については、在トロント日本国総領事館は、オンタリオ州の公証人(Notary Public)の証明を受けて日本側に送付するよう案内しています。カナダは2024年1月11日にアポスティーユ条約に加入しており、提出先から求められた場合は、公証を受けた書類にオンタリオ州政府の Official Documents Services でアポスティーユを付けることができます。手数料は公証書類1件につき16ドルです。
日本の金融機関や法務局は、提出先ごとに独自の書式や日本語訳を求めることがあります。また、2024年4月1日から相続登記の申請が義務化され、日本国外にお住まいの方も対象となっています。書類を作成する前に、提出先の要件をご確認ください。
Jenna Lee Lawへのご相談
Jenna Lee Lawでは、財産管理のための委任状と医療と生活に関する委任状の作成、日本で使う委任状のご準備について、ご相談を承っています。
参考(公式情報)
オンタリオ州政府、Make a power of attorney(2025年10月14日更新):https://www.ontario.ca/page/make-power-attorney
オンタリオ州政府、Authenticate a document for use outside Canada(2026年6月8日更新):https://www.ontario.ca/page/authenticate-document-use-outside-canada
在トロント日本国総領事館、署名証明:https://www.toronto.ca.emb-japan.go.jp/itpr_ja/b_000010.html
在トロント日本国総領事館、在留証明:https://www.toronto.ca.emb-japan.go.jp/itpr_ja/b_000009.html
法務省、外国に居住する方の署名証明:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00346.html
本記事は2026年10月15日時点の一般的な情報であり、法律上の助言ではありません。委任状の内容と効力は個々の状況によって異なり、関連する規則や各機関の要件も変更される可能性があります。委任状を作成または使用する前に、Jenna Lee Lawにご状況をご確認ください。本記事をお読みいただいたことにより、弁護士と依頼者の関係が成立するものではありません。