オンタリオ州の少額裁判所(Small Claims Court):5万ドル以下の請求の手続きと裁判所手数料

オンタリオ州の少額裁判所(Small Claims Court):5万ドル以下の請求の手続きと裁判所手数料

本記事の情報は2026年10月15日時点のものです。

貸したお金が返ってこない場合や、商品やサービスを提供したのに代金が支払われない場合、オンタリオ州では少額裁判所(Small Claims Court)に訴えを起こすことができます。2025年には請求の上限額と裁判所の規則がいずれも変わったため、それ以前の基準で書かれた案内は現在の内容と異なることがあります。

2025年に変わった少額裁判所の規定

2025年10月1日から、少額裁判所で請求できる上限額が3万5千ドルから5万ドルに引き上げられました。同じ日から、判決に対して上訴できる最低金額も3,500ドルから5,000ドルに引き上げられ、支払いを命じる金額が5,000ドルを超える判決に限り、上位裁判所の上訴部(Divisional Court)に上訴できます。住宅の賃貸借をめぐる紛争を扱う家主・借家人委員会(Landlord and Tenant Board)の金額上限も少額裁判所の上限と連動しており、同じく5万ドルに引き上げられました。

2025年6月1日からは、少額裁判所の規則も改正されています。審理を対面、ビデオ、電話のいずれで行うかを決める手続きが設けられ、審理期日の延期には裁判所の命令が必要になりました。審理の前に争点を整理し、準備状況を確認する審理準備協議(trial management conference)も新たに導入されました。弁護士に依頼せずご自身で訴訟を行う当事者が和解を提案し、相手方がそれを拒んだうえで、判決がその提案と同じかより有利な内容になった場合には、手間と費用に対する補償として最大1,500ドルが認められることがあります。以前の上限は500ドルでした。

オンラインで書類を提出する窓口も変わりました。2025年10月14日から、トロント地域の事件は Ontario Courts Public Portal、トロント以外の地域の事件は Justice Services Online の Small Claims Court Submissions Online から提出します。

オンタリオ州の少額裁判所で扱う事件

少額裁判所は、5万ドル以下の金銭の請求と、動産の返還の請求を扱います。5万ドルを超える請求は、オンタリオ州上位裁判所(Superior Court of Justice)に起こす必要があります。受け取るべき金額が5万ドルを超えていても、超える部分を放棄すれば少額裁判所に訴えを起こすことができます。

代表的なのは、契約に基づく代金の請求です。提供した商品やサービスの未払い代金、返済されない貸付金、滞納された家賃、不渡り小切手(NSF)などがこれにあたります。財産の損害、クリーニング店で傷んだ衣類、身体のけが、契約違反によって生じた損害の賠償を求めることもできます。

弁護士やパラリーガル(オンタリオ州の免許を持つ法律専門職)に依頼せず、ご自身で訴訟を進めることもできます。

なお、日本の少額訴訟は60万円以下の金銭の支払いを求める訴えについて原則1回の審理で解決を図る手続きで、オンタリオ州の少額裁判所とは別の制度です。本記事の内容はオンタリオ州の手続きに限られます。

原告が提訴の前に確認すること

ほとんどの事件では、問題が起きた日から2年が過ぎると訴えを起こすことができません。訴える相手の個人や事業者の正式な法的名称と住所が必要で、過去5年以内に登録された事業者は ServiceOntario の事業者名検索で確認できます。何が起きたのか、なぜお金を受け取るべきなのかを簡潔に整理し、契約書や領収書、写真などの証拠を用意してください。

勝訴しても相手が支払わない場合は、原告ご自身が判決の執行手続きを取る必要があります。訴えを起こすかどうかを決める前に、相手に支払い能力があるかどうかも併せて検討しておくことをお勧めします。

少額裁判所での手続きの流れ

原告は、原告の請求書(Plaintiff’s Claim、Form 7A)を作成し、オンライン、窓口、郵送のいずれかで裁判所に提出します。提出先は、問題が起きた地域の裁判所、相手が住んでいるか事業を営んでいる地域の裁判所、またはそこから最も近い裁判所です。

裁判所が押印した請求書は、発行日から6か月以内に相手に渡す必要があり、これを送達といいます。送達の後は、相手ごとに送達宣誓供述書(Affidavit of Service、Form 8A)を作成して裁判所に提出します。

相手は、請求書の送達を受けた日から20日以内に答弁書(Defence、Form 9A)を提出できます。相手が請求を認めて支払い条件を提案し、原告がそれを受け入れれば、手続きはそこで終わることがあります。相手が請求を争う場合、双方は裁判官が主宰する和解協議(settlement conference)に出席し、証拠とそれぞれの主張を示します。合意に至らなければ審理に進み、裁判所が審理の前に審理準備協議を開くことがあります。

相手が20日以内に答弁書を提出しない場合、原告は裁判所に欠席判決(default judgment)を申し立てることができます。受け取るべき金額が契約書などで明確な場合は書類だけで申し立てができ、損害額のように金額が明確でない場合は、裁判官が書類を検討するか、別途審問を開いて金額を決めます。

オンタリオ州の少額裁判所の手数料

裁判所の手数料は、同じ裁判所に1年間に起こす請求の件数によって異なります。年間10件未満の場合、請求書の提出が108ドル、欠席判決の申立てが94ドル、審理または損害額審問の期日指定が308ドル、申立書の提出が127ドルです。年間10件以上の場合、請求書の提出が228ドル、欠席判決の申立てが128ドル、期日指定が403ドル、申立書の提出が127ドルです。訴えられた側が答弁書を提出する際は77ドルがかかります。手数料の支払いが難しい場合は、手数料免除を申請できます。

このほか、証人の交通費や通訳費などがかかることもあります。敗訴した場合は、ご自身の費用に加えて、相手方の費用の一部の負担を命じられることがあります。

判決後に原告が支払いを受ける方法

判決を得ても、相手がすぐに支払うとは限りません。その場合、原告は相手の給与や銀行口座の差押え、または相手の動産や土地の差押えと売却によって、判決を執行することができます。相手の財産の状況が分からない場合は、債務者審問(examination hearing)を申し立て、職業、収入、財産、銀行口座、債務などについて相手に回答させることができ、裁判官はそれをもとに支払いの日程を定めることがあります。執行手続きにも手数料がかかり、差押え通知は144ドル、差押え・売却令状と債務者審問の通知はそれぞれ68ドルです。

訴訟以外の解決方法

訴訟には時間と費用がかかり、敗訴すれば費用の負担を命じられることもあります。訴えを起こす前に、書面で支払いを求めたり、直接交渉したりすることができます。中立の第三者が合意を手助けする調停(mediation)や、双方が結果に従うことを約束したうえで中立の仲裁人の判断を受ける仲裁(arbitration)も検討できます。

Jenna Lee Lawへのご相談

Jenna Lee Lawでは、少額裁判所での訴えの提起と応訴、提訴前の支払請求書面の準備について、ご相談を承っています。

参考

オンタリオ州政府、Small claims court: suing someone(2025年10月1日更新):https://www.ontario.ca/page/suing-someone-small-claims-court

オンタリオ州政府、Small claims court fees(2025年10月24日更新):https://www.ontario.ca/page/fees-small-claims-court

オンタリオ州政府、File small claims court documents online(2026年10月1日更新):https://www.ontario.ca/page/file-small-claims-court-documents-online

裁判所(日本)、少額訴訟:https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_02/index.html

本記事は2026年10月15日時点の一般的な情報であり、法律上の助言ではありません。訴えを起こせるかどうかや結果は事件の事実関係によって異なり、関連する規則や手数料も変更される可能性があります。訴えを起こす前、または訴えに対応する前に、Jenna Lee Lawにご状況をご確認ください。本記事をお読みいただいたことにより、弁護士と依頼者の関係が成立するものではありません。