カナダの未活用住宅税(UHT)
廃止後も過去の年度分の申告は終わっていません
連邦の未活用住宅税(Underused Housing Tax、UHT)は、2025年分から廃止されました。この知らせを聞いて、過去の年度分もなくなったと考えている方が少なくありません。実際には、2022年、2023年、2024年分の申告と納付の義務、そして怠った場合の罰金と利息は、現在も残っています。本記事は2026年10月25日時点の情報です。
未活用住宅税(UHT)とはどのような税金でしたか
UHTは2022年1月1日に施行された連邦税で、カナダ国内の空き家や利用の少ない住宅に対し、毎年課税価額の1%を課していました。毎年12月31日時点の所有者が対象で、申告と納付の期限は翌年4月30日でした。
主な対象は、カナダ市民でも永住者でもない所有者です。個人名義で住宅を所有するカナダ市民と永住者は、当初から申告の対象外でした。
2025年から何が変わりましたか
2026年3月26日に裁可(Royal Assent)を受けた2025年予算実施法(第1号)により、2025年分からはUHTの納付も申告も必要ありません。カナダ歳入庁(CRA)も同じ内容を公表しています。
ただし、この法律は過去の年度分をなくしたわけではありません。未活用住宅税法そのものの廃止は2035年1月1日と定められており、それまでは2022年から2024年分の申告、納付、罰金に関する規定が引き続き効力を持ちます。
2022年から2024年分は誰が申告する必要がありましたか
カナダ市民でも永住者でもない個人と外国法人は、3年分いずれも申告の対象でした。2022年分に限っては、カナダ法人、カナダのパートナーシップのパートナー、カナダの信託の受託者も対象で、2023年分からは対象外となりました。
日本の方に多いのが、駐在などで就労許可(ワークパーミット)を得てカナダに住み、住宅を購入したケースです。永住権がなければ、カナダに住んでいても申告の対象でした。その住宅に実際に住み、主たる住居としていた場合は、課税が免除される可能性があります。一方、日本に帰国して生活の本拠が日本に移ると、カナダの住宅は原則として主たる住居とは扱われず、この免除は通常使えません。
見落とされやすいのが、免除と申告の関係です。所有者本人や配偶者の主たる住居である場合、1年のうち180日以上、要件を満たす居住や賃貸がある場合、新築住宅である場合などは、課税が免除されることがあります。しかし免除は申告書の中で主張するものであり、納める税金がなくても申告の義務は残っていました。
申告期限は、2022年分が2024年4月30日まで延長され、2023年分は2024年4月30日、2024年分は2025年4月30日でした。
申告しなかった場合、どのようなリスクがありますか
申告が遅れると罰金が科されます。罰金は、個人1,000ドル、法人2,000ドルと、税額の5%に遅れた月ごとに税額の3%を加えた額のうち、いずれか大きい方です。つまり、免除によって納める税金がなくても、最低罰金が科される可能性があります。以前の案内で見られた個人5,000ドル、法人10,000ドルの最低罰金は、2024年の法改正で2022年分にさかのぼって引き下げられました。
未納の税金には利息がかかります。また2023年分からは、対象年度の翌年12月31日までに申告しなかった場合、一部の免除を適用しない金額を基準に罰金が計算されることがあります。
特に注意が必要なのは、申告書をまったく提出していない年度については、CRAが期間の制限なく税金と罰金を課すことができる点です。時間が経っても、自動的に解決するわけではありません。
いまからできること
これらの年度の申告書は、現在も提出できます。申告の対象だったか、免除に当たるかがはっきりしない場合は、まず年度ごとに住宅の所有形態と、居住や賃貸の記録を整理することから始めます。
監査や調査が始まる前であれば、自主開示プログラム(Voluntary Disclosures Program)によって罰金と利息を軽減できるか検討できます。CRAは、このプログラムがUHTにも適用されると明示しています。CRAから問題を指摘される前に申請するほど、軽減の幅は大きくなります。すでに課された罰金については、事情に応じて免除や取消しを求める手続もあります。どの方法が適しているかは、申告しなかった理由、年度、金額によって異なります。
トロントの空き家税とは別の税金です
UHTはトロント市の空き家税(Vacant Home Tax)と混同されがちですが、まったく別の税金です。トロントの空き家税は市の税金で、国籍や居住地にかかわらず、トロントのすべての住宅所有者が毎年、居住状況を申告しなければなりません。自分で住んでいても申告が必要で、申告しなければ空き家とみなされます。2024課税年度から、税率は不動産評価額(CVA)の3%です。連邦のUHTが廃止されても、トロントの空き家税には影響ありません。
Jenna Lee Lawへのご相談
Jenna Lee Lawでは、弁護士であり公認会計士(CPA)でもある主任弁護士が直接ご相談を承ります。過去の年度に申告が必要だったか、どの免除が使えたかの確認から、期限後の申告、自主開示、罰金の免除申請まで、法律と税務の両面から対応します。駐在中にカナダで住宅を購入された方、日本に帰国した後もカナダの住宅を所有されている方は、廃止の知らせとは別に、過去3年分が整理されているかを確認しておくことをお勧めします。
参考(公式情報)
カナダ歳入庁、未活用住宅税の概要(UHTN1):https://www.canada.ca/en/revenue-agency/services/forms-publications/publications/uhtn1/introduction-underused-housing-tax.html
カナダ司法省、2025年予算実施法(第1号)(S.C. 2026, c. 3):https://laws-lois.justice.gc.ca/eng/AnnualStatutes/2026_3/FullText.html
カナダ歳入庁、主たる住居の免除(UHTN6):https://www.canada.ca/en/revenue-agency/services/forms-publications/publications/uhtn6/exemption-primary-place-residence.html
カナダ歳入庁、自主開示プログラム(IC00-1R7):https://www.canada.ca/en/revenue-agency/services/forms-publications/publications/ic00-1/ic00-1r7-voluntary-disclosures-program.html
トロント市、空き家税(Vacant Home Tax):https://www.toronto.ca/services-payments/property-taxes-utilities/vacant-home-tax/
本記事は2026年10月25日時点の一般的な情報であり、法律上または税務上の助言ではありません。申告の要否、適用できる免除、罰金は、住宅の所有形態と年度ごとの事情によって異なるため、申告や自主開示の前にJenna Lee Lawにご状況をご確認ください。本記事をお読みいただいたことにより、弁護士と依頼者の関係が成立するものではありません。